2013年10月28日月曜日

放射線治療の有害事象1 「放射線皮膚炎」

乳がん術後の放射線治療でもっともよく見られる有害事象は皮膚障害です。

放射線治療は抗がん剤と同様に細胞周期の速い細胞に影響が出やすいため、骨髄細胞や消化管粘膜、そして皮膚の基底細胞などが障害を受けます。その症状は、軽度(第1度皮膚炎)では皮膚の発赤、乾燥、かゆみ、脱毛が出現します。そして徐々に発赤の悪化、腫れ、痛みが出現し(第2度皮膚炎)、第3度皮膚炎になると水泡、びらん、出血、そして第4度皮膚炎では、潰瘍、壊死が起きる場合もあります。第4度皮膚炎を起こすことは非常にまれで、私はまだ経験がありません。

ブースト照射を追加しない場合の皮膚障害の場合の多くは第1-2度の一時的な皮膚炎です。ただ第2度皮膚炎では、色素沈着や皮膚の乾燥状態はは1年くらい続くことが多いような印象です。ブースト照射を追加した場合の線量は60Gyくらいになるため、時に第3度の皮膚炎を起こします。この場合はしばらく痂皮化したような状態(ひどい日焼けのあとで皮が剥ける前のような状態)が続き、血管拡張や皮膚の萎縮をきたすこともあります。

対処法は、施設によって様々なようですが代表的な対処法は以下の通りです。
・軽度のほてり、かゆみ、ひりひり感→まずは冷庵法を試します。氷嚢、アイスノン、濡れタオルなどを使用します。
・皮膚乾燥→ワセリンの塗布。
・かゆみや発赤などの炎症が強い場合→症状に応じてアズノール、またはアズノール+ステロイドの軟膏を使用。
・皮膚剥離やびらん→アズノール+抗生物質の併用。
・皮膚潰瘍、壊死→皮膚被覆剤の使用や植皮などの形成外科的治療を検討。

軟膏については、医師の指示に従うこと、放射線治療前には洗い流しておくことが大切です。軟膏を塗ったまま放射線照射を受けると皮膚障害がかえって強く出る場合があるようです。

このようなことを書くと放射線治療が怖くなる方もいらっしゃるかもしれませんが、ほとんどの場合の皮膚炎は時間とともに軽快し、色調の左右差も目立たなくなってきます。また、それでも気になる方にはスキンカモフラージュという方法もありますのでご興味のある方は検索してみて下さい。

2013年10月19日土曜日

明日は”ジャパン・マンモグラフィー・サンデー(J.M.S)”

明日はJ.POSHが全国の医療機関に呼びかけて日曜日にも乳がん検診を受けれるようにと数年前から始まった”ジャパン・マンモグラフィー・サンデー(J.M.S)”です(http://jms-pinkribbon.com/)。

私たちの施設と関連施設でもこの運動に賛同して毎年行なっています。今回も乳腺外科医3人が3カ所の病院で乳がん検診を行ないます。私はいつも関連病院の担当で、G先生は本院、N先生は釧路に出張しています。

今年は例年以上に乳がん検診受診者数が多い印象です。関連病院のマンモグラフィも週1回の外来の時だけでは読影が困難なので、今日も外来はなかったのですが行ってきました。無料クーポンが報道通りに来年からなくなってしまったら検診受診率が減ってしまうのではないかと少し心配ですが、現時点でも日常診療を行ないながらすべての検診マンモグラフィをダブルチェックするのはなかなか大変です。検診受診率はもっと増やしたいのですが、精度を落とさずにマンモグラフィを読影する工夫が必要だと思っています。

とりあえずやれる範囲内で頑張ります。乳がん検診が無意味だと主張する人たちをなんとか日本の検診データで説得したいものです。

2013年10月16日水曜日

速報! アナトミカルタイプの人工乳房(インプラント)が承認!

今年、ようやく一次再建、二次再建に対する皮膚拡張器(ティッシューエキスパンダー)と人工乳房(インプラント)が保険適用となったことはここで何度かご紹介しました。

ただ、皮膚拡張のために挿入するティッシューエキスパンダーがアナトミカルタイプ(自然な乳房の形に近いしずく型)が承認されたにもかかわらず、当初承認されたインプラントは、ラウンドタイプというちょっと上側の立ち上がりが急峻な丸いタイプのみでした。これに関しては承認に至る様々な事情があることは聞いていましたが、私たちとしてはなんとか早くアナトミカルタイプのインプラントを承認して欲しいと思っていました。

噂では来年春くらいにはアナトミカルタイプが承認されるのではないかと言われていたのですが、インプラントの発売会社のアラガン・ジャパン担当者から、”昨日、ゲル充填人工乳房「ナトレル® 410 ブレスト・インプラント(医療機器承認番号:22500BZX00460000)」(アナトミカルタイプ)の製造販売承認を厚生労働省から取得した”というメールが届きました。

実際の発売は来年度第一四半期?くらいになりそうですが、これでより美しい乳房を再建するための選択肢が増えることになります。目処が立ったので、これからはとりあえずティッシューエキスパンダーを挿入しておいて、拡張しながらアナトミカルタイプの発売を待つということができそうです。

2013年10月15日火曜日

リンパ浮腫チーム

今日、リンパ浮腫治療の今後の方針を決めるカンファレンスを行ないました。

乳がん術後のリンパ浮腫は一度発症してしまうと完治はなかなか困難です。施設によってはリンパ浮腫外来を行なっているところもありますが、現在の診療報酬では力を入れるのは困難な状況ですので、結局自費診療でやっている施設がほとんどで、しかもかなり混雑しています。日常診療では十分な時間をかけて指導することは困難で、結局重度のリンパ浮腫は専門施設にご紹介する場合がほとんどでした。それも経済的に余裕がある方に限られますので入院中の患者さんに対しては一定の研修を受けた化学療法室の看護師が適宜対処するくらいが精一杯でした。

この間がん診療委員会でそういう問題に対して検討してきたのを受けて、リハビリ技師が2人研修を受けてきました。研修を受けたことによって彼女たちはリンパ浮腫に対する問題意識を持ってくれたようで、術前後のリンパ浮腫に対する予防の指導を始め、リンパ浮腫の治療にも取り組んでくれることになりました。まだまだ経験は不十分ですが、これから病棟、外来の看護師たちと連携しながら軽度から重度までのリンパ浮腫の治療に対しても彼女たちが中心になって頑張ってくれそうです。

今日の会議ではとりあえず術前後の指導を徹底することと、軽度のリンパ浮腫に対する外来での治療の流れについて検討しました。今後は病棟看護師にも会議に参加してもらって重度のリンパ浮腫に対する入院治療に関しての流れを検討する予定です。

これからも乳腺外科医、緩和治療医、リハビリ技師、外来・化学療法室・病棟看護師でリンパ浮腫チームを作って少しでも治療の室を高める努力をしていきたいと考えています。

乳がん検診の現況と社会情勢とマイブーム

ここのところ病棟は比較的落ち着いています。外来は検診の数が相変わらず多くて(特に関連病院)今日も外来をこなしながら大量のマンモグラフィを読んできました。

そう言えば40-60才まで5才ごとに配られていたマンモグラフィの無料クーポン券が来年から40才のみになるような報道がこの前新聞に出ていました。ただネット上で検索しても公式な厚生労働省の見解は見つけられませんでした。どうなるんでしょうね…。財政的に余裕があれば対象者の検診全てを無料にすればいいのにと思うのですが現状では難しそうですね。せっかくようやく日本でも乳がん死亡率が低下する兆しが見えてきたところですのでこの流れは止めたくないものです。

悲惨なニュースも多くてなかなか明るい話題がない日々が続いていますが、自分なりに気分転換は心がけています。つまらない話ですが、最近のマイブームをご紹介します。

①紙兎ロペ…フジテレビの”めざましテレビ”で朝7:00前くらいに放送されているアニメ。紙兎の主人公ロペとアキラ先輩(むしろこっちが主人公?)のやりとりがなんともいえない癒しです(笑)。でも監督が内山勇士さんから変わってからなんとなく雰囲気が変わった印象が…。写真は娘がロフトで買ってきてくれたクリアファイルです!



②ふなっしー…最近”笑っていいとも”でも準レギュラー?で出ているようですね!非公認なのに頑張っているから応援しています!なぜか家にはふなっしーグッズがいっぱいあります(笑)

③斉藤和義…最近よく聞いています。先日アルバムをレンタルしてきて車の中でも聞いています。CMでも使われていますが”Always”いいですね!”ずっと好きだった”の替え歌があるのを知っていますか?もう2年も前にアップされたものですが、最初にYou Tubeで見つけた時にはその歌詞にびっくりしました。自分の考えをきちんと主張する彼は勇気があります。批判する人たちもいることを知っていながらなかなかできることではありません。


乳がんと闘っているとどうしても気分は重くなってしまいがちです。たしかに病気について考えることは大切なことですが、気分転換も必要ですので何か夢中になれるもの、笑えるようなものを見つけましょう!

2013年10月12日土曜日

昨夜はイタリアンで病院連携!

昨夜はいつも大変お世話になっているD病院形成外科のE先生からのお誘いで、D病院のH院長先生、形成外科のI先生との会食でした。場所は、E先生に誘われて何度か行ったことがあるすすきののイタリアン&ワインのお店V。この店は美味しいイタリアワインが手頃な値段で飲めて料理もとても美味しいので私のお気に入りです。

I先生とは一度面識はあったのですが、H先生は実際にお会いするのが初めてだったので私は少し緊張していました。でもとても気さくな先生ですぐにリラックスした雰囲気で楽しい時間を過ごすことができました。ちなみにH先生の弟さんは私の大学の同期で、現在K病院で乳腺外科をやっている乳腺仲間です。

会食では手術に関する話はもちろん、病院経営や人事に関する話など医療に関する話題が中心でしたが、それ以外にもとても勉強になるお話を伺うことができました。夢中になって話していたら、あっという間に4時間以上たっていました。その間にいつの間にかスパークリングワイン1本、赤ワイン3本が空になっていました(汗)。I先生は女性ですが、ほとんど酔った感じはなく、けっこうお酒は強そうでした(笑)

最近はますますE先生にご紹介する患者さんが増えています。北海道は首都圏などに比べると乳房再建に対する要望が少ないと言われてきましたが、少しずつ変わってきているのかもしれません。今も数人再建予定の術前術後の患者さんが待機しています。またやっかいな乳輪下膿瘍の患者さんの手術も快く受けてくれますので本当に助かっています。これからも患者さんにとってベストの選択ができるようにE先生と良い連携を取りながらやっていきたいと思っています。

2013年10月6日日曜日

「大丸・松坂屋ピンクリボンキャンペーン2013」

10月は乳がん検診の啓発活動を全国で展開するピンクリボン月間です。今日は、H病院のO先生からのお誘いで、大丸札幌店の3Fで行なわれたピンクリボンキャンペーンのお手伝いに行ってきました。



14:30まではO先生、その後18:00までは私がブースで待機して、訪れたお客さんに自己検診模型を使った触診の方法の説明や、病院・検診機関のかかり方や若年者の乳がん検診についてなどのご説明をしました。

午前中の来客数は比較的少なかったようですが、私が担当してからは結構な数の女性がブースを訪れてくれました。特に目立ったのはベビーカーを押した比較的若いお母さんグループやご夫婦でした。やはり40才未満の女性の乳がん検診方法が確立していないことが背景にあるようです。お母さんが乳がんで手術したというような家族歴のある方もいらっしゃいました。一緒にいらしたパートナーの方々も興味深そうに触診モデルに触れていってくれました。

若年者の検診に関しては、現時点の対応としては自己検診を定期的に行なって気になることがあればすぐに乳腺外科を受診すること、会社の健診でマンモグラフィや超音波検査を受けることができる場合は有効活用して良いですが、その検診精度の限界と有益性が確立していないことを理解した上で受けることなどについてご説明しました。

トータルでは50名くらいの方がブースを訪れて下さり、イベントとしては成功だったのではないかと思います。なお、このブースにも置いていましたが、大丸のマスコットキャラクターのさくらパンダを使ったピンクリボンピンバッジはなかなかかわいいです!10月中は大丸で売っているようですので(200円)興味ある方は是非大丸でゲットして下さい(私は5個買ってきました 笑)。


(写真は大丸・松坂屋ピンクリボンキャンペーンHPより転載 http://dmdepart.jp/pinkribbon/)

ブースには偶然私の患者さん(Mさん)のご友人がいらっしゃって、その後連絡を受けたMさんまで来店して下さったり、製薬会社(N社)の方が私用でたまたま通りかかってわざわざピンクリボンピンバッジを買いにきて下さったりというサプライズもありました。3時間半ほぼ立ちっぱなしではありましたが、大丸の社員の方々や、マンモグラフィの器械の説明をして下さっていたT社の方などと交流しながら楽しい時間を過ごすことができました(笑)。

2013年10月2日水曜日

ご自身の病状に関するご質問について

このブログを始めて4年半ほどが経過しました。おかげさまでたくさんの方々に訪問していただき、温かいコメントもいただいてなんとかモチベーションを保ってここまで続けてこれました。

書き込んでいただいたコメントのほとんどは、ブログの内容に関することなのですが、時に記事の内容と関係のないご自身の病状に関する質問がコメントされることがあります。診断や治療に関して悩んでいることは十分に理解できますので、今まですべてのご質問に 対して私がわかる範囲でお答えしてきました。

しかし、最近このようなご質問が非常に多くなってきており、ここ数年ずっと悩んでいました。このようなご質問にお答えする際には、私も文献やガイドライン、インターネットなどを調べなければならないことがあります。無責任に適当なことをお答えするわけにはいかないからです。そういう質問が複数同時に来るとかなりの時間を要してしまいます。本当はこのようなご質問を寄せる場を設けて、多くの疑問にお答えできれば良いのですが、なかなか時間的には厳しいのです。

このブログは、乳がんに関する情報を提供する目的で始めました。患者さん個人個人の医療相談やセカンドオピニオンを主目的にしているわけではありません。また、患者さんからの一方向の情報では正確にお答えすることはできません。セカンドオピニオンであるなら、主治医からの病理所見や検査データなどの資料が必須です。インターネットは気軽に聞けると思われるかもしれませんが、答える側としては非常に神経を使うものなのです。

さらに、本来主治医に聞くべき内容なのにここで質問される場合も多いです。主治医には聞きにくいと思っているのだと思いますが、主治医と風通しの良い関係を築くことは大切なことです。納得がいくまでまずは主治医に聞いてみて下さい。メモをあらかじめ用意しておくとスムーズに話は進むと思います。

以上を踏まえた上でもやはり疑問が解消されず、参考程度でも良いので意見を聞きたいという場合には、コメントでご質問いただいてもかまいませんが、画像やデータの不十分な中でお答えできる内容には限界があることを是非ご理解下さい。